VIIRS/NPPの受信処理状況について


            浅沼 市男、張 祥光
                                                東京農業大学 谷口旭、塩本明弘、西野康人、朝隈康司

1.Suomi-NPPとVIIRSについて
  米国政府は、1994年に米国の複数機関による複数の極軌道衛星計画を、国家極軌道実用環境衛星システム(National Polar-orbiting Operational Environmental Satellite System (NPOESS))として統合することを決定した。このNPOESSの事前計画として、米国航空宇宙局(NASA)により、2011年10月28日にNPOESSの事前衛星(NPOESS Preparatory Project(NPP))が打ち上げられ、極軌道へ投入された。2012年1月24日には、衛星気象観測の生みの親である米国ウイスコンシン大学の故Verner E. Suomi教授に敬意を表し、Suomi-NPP (スオミ国家極軌道パートナーシップ:Suomi-National Polar-orbiting Partnership)と名称が変更された。  Suomi-NPPは、環境観測衛星として、以下の5つのセンサーを搭載する。 ・ Advanced Technology Microwave Sounder (ATMS) 技術改良型マイクロ波サウンダ ・ Cross-track Infrared Sounder (CrIS) 軌道直交近赤外サウンダ ・ Ozone Mapping and Profiler Suite(OMPS) オゾン・マッピング・プロファイラ群 ・ Visible Infrared Imaging Radiometer Suite (VIIRS) 可視近赤外画像放射計群 ・ Clouds and Earth’s Radiant Energy System (CERES) 雲・地球放射エネルギ・システム これらの内、東京情報大学では、Terra/Aqua搭載のMODISを継続するセンサーとして、VIIRSデータの受信準備を進めてきた。Xバンド受信システムの更新を進め、2012年5月30日に東京情報大学における受信を皮切りに、2012年6月21日にオホーツクキャンパスにおいて、2012年7月5日に宮古亜熱帯農場において、それぞれVIIRS観測データの受信を開始した。  NPPとTerra/Aquaの軌道要素は、表1の通りである。軌道要素はほぼ同様であるが、NPPは若干高めの軌道を飛行し、これにより、VIIRSによる3000kmの観測幅を実現した。この観測幅の拡大により、ベトナム全域を含む赤道域を含むアジア東南域の定常的な観測が可能となった。
表1 衛星軌道要素比較表
Terra Aqua NPP
軌道高度(km) 725 708 824
軌道傾斜角(度) 98.2 98.14 98.7
軌道周期(分) 98.8 98.4 101
周回数(回/日) 14.56 14.56 14.26
2.Simulcast serviceの利用について
    同時伝送サービス(Simulcast service)は、MODISの運用時から利用されてきた受信データの同時伝送サービスである。VIIRSにおいても同様のサービスが提供され、同時伝送ビューアにより、受信時にリアルタイムでVIIRS観測データをモニター可能である。同時伝送サービスとビューアの最新バージョンは、64ビットのPCのみをサポートし、32ビットの従来のPCでは利用できない。  東京情報大学では、東京情報大学、オホーツクキャンパス、宮古亜熱帯農場の各地上局からの受信データを東京情報大学に設置したダウンストリーム・サーバーへ集約し、一般へ提供している。この東京情報大学のサイマルキャスト・ダウンストリーム・サーバーのアドレスは、以下の通りである。サイマルキャスト・ビューアをNASAからダウンロードし、インストールし、以下のホストを指定することで利用可能となる。  simulcast.tuis.ac.jp:3502 ここで、3502は同時伝送サービス指定のポート番号であり、ファイヤ・ウオールがある場合、3502の通過許可を得る必要がある。
3.IPOPPによる処理体制について
NASAの衛星データ受信研究室(DRL)の協力を仰ぎ、国際極軌道処理パッケージ(International Polar Orbiter Processing Package (IPOPP))の導入し、VIIRSデータの処理体制を整備しつつある。提供を受けたIPOPPは、バージョン2αであり、開発中のパッケージであることから、導入にともなうトラブルなどを報告しながら、導入を進めている。  図1、3、4、5は、東京情報大学において受信したVIIRS(2012年6月30日)のデータについて、IPOPPにより処理した結果の一部の画像である。図1はVIIRSの補正済み反射率画像(crefl)であり、図2はMODIS(2012年8月22日)の補正済み反射率画像(crefl)である。MODISの走査幅が2000kmであるのに対して、VIIRSの走査幅が3000kmであり、明らかに観測領域の拡大と観測頻度の充実が図られた。MODISのバンド数が36バンドに対して、VIIRSのバンド数が22と少なく、多波長を利用した成果物に限定がある。一方で、300mと700mの空間分解能となり、MODISと異なる情報の提供の可能性があり、今後の展開が期待される。  図3は地表面反射率(scref)、図4は正規化植生指数(NDVI)、図5は地表面温度(LST)と、いずれも地理情報システムへ直接投影可能なGeoTiFFフォーマットが提供される。この他、IPOPPの標準成果物が生成される。  この他のIPOPPの成果物についても、HDFフォーマットとGeoTiFFフォーマットの画像が自動的に生成される。IPOPPの運用が軌道に乗り次第、これらの成果物については、FTPサーバーを経由し、一般へ公開する予定である。また、海洋に関する成果物についても近日中に公開する予定である。