平成22年度以降の計画
■1. 東シナ海観測研究
     引き続き、与那国島、屋久島、対馬における海水の採水、CDプロファイリングの観測研究を継続する。漁船を利用する観測であることから、不安定な観測環境であったが、ここに来て、再現性のある採水とCTDプロファイリングが可能となり、長江からの河川流入水の影響について、より精度の高い観測研究が可能になってきた。三峡ダムにより、制御された河川流入水の貢献について、引き続き検討を行う。
■2. オホーツク海観測研究
     北海道オホーツク海沿岸域の能取湖沖における低次生物生産に関わる調査を継続することにより、宗谷暖流系水で大型の植物プランクトンが多いメカニズムを明らかにする。次に、大気からの微量栄養成分(鉄)の供給の季節変動や動物プランクトンの個体数・種組成の季節変動を明らかにする。さらに、人工衛星を用いて宗谷暖流系水のモニタリングを実施する。
■3. 黒潮をひとつのパラメータとして、東シナ海とオホーツク海の連携と新たな展開
   ・ 共通観測パラメータの設定:
栄養塩(現場計測)、海表面温度及びクロロフィル-a濃度(MODISデータ)の解析。"
   ・ オホーツク海外洋における海洋観測の展開。
   ・ 東京湾における海洋観測の可能性を検討。
   ・ 黄砂を東アジア域の環境パラメータとする可能性について検討。
■4. 啓蒙普及
   ・ オホーツク漁協へのPC貸出しと衛星データの提供(海表面温度、クロロフィル-a濃度分布)。
   ・ 宮古島漁協へのPC貸出しと衛星データの提供(海表面温度、クロロフィル-a濃度分布)。宮古島市役所から移動。
   ・ 網走市第26営農集団におけるGPSを利用した圃場作業支援のためのGPS精度検証活動。
平成21年度までの研究実績
■1. 東シナ海観測研究
    北赤道回流を源流とする黒潮は、栄養塩が枯渇し、高塩分濃度の状態で、東シナ海へ流入する。東シナ海では、長江からの河川流入水が季節変動と経年変動を繰り返し、大陸棚に沿って流れる黒潮と海水の交換を行ってきた。2003年に三峡ダムが運用され、長江からの流入河川水の量、質ともに変化してきた。この長江からの河川流入水が黒潮と下流域へどのような影響を及ぼすかを評価することが本研究の目的である。
2005年から、与那国島、屋久島、対馬における採水を含む観測研究を行ってきた。これらの結果、長江流入水の影響と季節変動について、栄養塩からその変動をモニター可能となった。"
■2. オホーツク海観測研究
    平成21年度においては、北海道オホーツク海沿岸域の能取湖沖において、4、5、9、11月において低次生物生産に関わる調査を行った。その結果、わずかなデータからではあるが、次のことが示唆された。
1)北海道オホーツク海沿岸域の宗谷暖流系水あるいは、その影響を受けた水では、大型の植物プランクトンが多かった。これは、大型植物プランクトンの成長速度が速いからではなく、動物プランクトンに利用されないために残っていたためかもしれない、
2)オホーツク海表層低塩分水では、大型の植物プランクトンは少なく、小型が多かった。これは、大型のものが動物プランクトンに利用されているために少なく、小型のものは利用されないために残っていたためかもしれない。また、大気からの微量栄養成分(鉄)の供給の季節変動や動物プランクトンの個体数・種組成の季節変動については現在、解析中である。