データと画像を地理情報システムで表示


            東京情報大学 浅沼 市男


データと画像


 水圏環境変動過程研究グループは、MODISによる観測データから抽出した海表面温度分布、クロロフィル-a濃度分布、流氷分布、雲分布などのデータと画像をWebから提供している。
 データとは、MODISの複数波長により観測された放射輝度値そのものの数値データ、あるいは、放射輝度値から経験式を介して求められた地球物理量の数値データである。ある特定波長の放射輝度値、地球物理量としての海表面温度、クロロフィル-a濃度分布などがデータである。データは、2次元の空間に配置された数値であり、データとして利用するためには、データに対応した処理プログラムが必要である。
 画像とは、複数波長により観測された放射輝度値のデータを可視化した画像、あるいは、観測放射輝度値のデータから抽出された地球物理量を可視化した画像である。トルーカラー画像は、観測された複数波長のデータの中から、青緑赤の3原色の観測波長帯域のデータを、青緑赤の3原色により再現したカラー画像である。フォールスカラー画像は、観測された複数波長のデータの中から、観測対象の特徴を判読可能なように観測波長帯域の組み合わせを選択し、青緑赤の3原色により再現したカラー画像である。また、ソードカラー画像は、一つのデータに予め配色したカラー画像である。例えば、観測された複数波長の内、一つの観測波長帯域のデータに配色したカラー画像、あるいは、求められた地球物理量のデータに配色したカラー画像である。地球物理量の画像は、地球物理量の分布を分かりやすく表示したものであり、地球物理量そのものの詳細なデータを読み取るものではない。


図1 データと画像のブラウズ用Webサイト(http://e-asia2.tuis.ac.jp)

 

図1は、海洋関連の成果物のブラウズ画像のサイトのトップページである。ブラウズとは、雑誌を拾い読みするように、Web上において画像を閲覧することである。アジア東岸域の全ての領域を一つの画像で取り扱うことも可能であるが、解像度を維持した場合に大きな画像となってしまうため、領域を分割した画像を用意した。例えば、トルーカラー東シナ海の画像をクリックすると、フォルダ内の画像のリストが表示される。さらに、ファイル名をクリックすると、図2のように画像が表示される。これらの画像は、衛星軌道により投影領域が異なるため、ときには、ほとんど衛星画像が含まれないこともある。また、ほとんどが雲のみの画像もあり、全域にわたり雲のない画像は非常に少ない。


図2 2010年8月1日02:13Z観測の東シナ海トルーカラー画像

 

画像の地理情報システムへの投影



 本Webサイトの画像のフォーマットは、JPEGかPNGである。JPEGあるいはPNG自体は、地理情報システムへ投影するための位置情報を含まない。このため、画像の左端の緯度、経度、画素サイズ、軸の傾きの情報を持つワールドファイルを用意し、地理情報システムへ投影する。
例えば、図2のファイル;TCOLOR_1000m.10213021339_East_China_Sea.jpg
に対して、ワールドファイル;TCOLOR_1000m.10213021339_East_China_Sea.jgw
を用意する。ワールドファイルのテンプレートをWebの「地理情報システムへの表示方法」に用意した。画像ファイルとワールドファイルを同一のフォルダへ配置し、ArcGISのような地理情報システムから画像ファイルを選択すると、地理情報システム空間へ投影される。また、一部の成果物については、投影のための位置情報を含むGeoTiFFフォーマットの画像も用意している。
 さらに、Google Earthのようなフリーウエアの地理情報システムへ画像を投影するためには、Googleの提唱するキーホール・マークアップ・ラングエッジ(KML)を用意する必要がある。KMLファイルは、画像ファイルの所在、画像の4隅の緯度経度情報を含むもので、テンプレートをWebサイトに用意した。例えば、図2の東シナ海の画像を表示するためには、テンプレートの
TCOLOR_1000m.yydddhhmmss_East_China_Sea.kml
をテキストエディタにより編集し、投影しようとする画像ファイル名を追記する。このKMLファイルをダブルクリックすると、Google Earthが起動し、通常の衛星画像上にMODISの観測データが表示される。
地理情報システムへ衛星観測画像を展開することにより、複数の画像をレイヤーにより選択表示が可能である。また、その他の地理情報をオーバーレイし、付加価値を付けることができる。

データの取り扱い

 図1のWebサイトでは、海表面温度とクロロフィル-a濃度分布の画像に加え、数値情報の利用が可能なHierarchical Data Format (HDF:階層型データフォーマット)のデータファイルを用意している。このHDFフォーマットは、衛星観測の分野において一般的なフォーマットになっており、HDFをサポートするプログラムが豊富なことから、本プロジェクトにおいてもHDFを採用している。
HDFのデータの読み取りあるいは表示などの作業は、ウインドウズに付随する一般的な画像表示プログラムでは困難であり、HDFデータを取り扱い可能なプログラムが必要である。
 海洋の分野では、米国NASAからフリーウエアのSeaWiFS Data Analysis System (SeaDAS)が公開されている(http://seadas.gsfc.nasa.gov)。SeaDASには、Interactive Data Language (IDL)のランタイム・ライブラリが含まれ、無料で高度な画像処理が可能である。この他、HDFデータを取り扱い可能な画像処理プログラムが販売されている。

 本プロジェクトにおいては、MODISから得えらえる成果物について、画像とデータを公開するためのサーバーを構築中である。