経済・社会環境グループ韓国(慶北大学校)における国際シンポジウム2012



グループリーダー  武井 敦夫


  2012年1月7日、昨年度に引き続いて東京農業大学の姉妹校である韓国 慶北大学校(テグ)で、金忠實教授が主催する国際シンポジウムに参加し、本学朴壽永研究員とともに研究発表を行なった。

2.解析適用例の紹介

国際シンポジウム参加者による集合写真


  国際シンポジウムは「2012 International Seminar on Database Construction for Climate Change Mitigation and Adaptation」とのテーマで実施され、経済・社会環境グループでは環境変化(Climate Change)への適応(Adaptation)に関係して、武井が「気候変動による中国と日本におけるコメ生産変化 ~東北中国吉林省における共同研究から (Climate Change and Rice Production Transition in China and Japan ~ Corporate Research in Jilin Province in North East China)」と題して、また朴研究員が「Clarification of Methane Emission Source using WDCGG data and GEP Method - Case Study of Anmyeon-do Observatory, Korea-」と題して発表した。

武井による発表風景

  武井の報告においては、中国吉林省農業科学院と共同で進めているコメの生産に関する研究について発表した。日本、韓国、中国の農業人口の比較研究や中国諸省におけるコメの生産状況について取り上げた。

中国・日本・韓国の農業人口


  わが国の農業人口は、総数では韓国よりも多いものの割合では半分以下であって、経済人口比で2.5%、総人口比で1.3%になっている。こうした状況を技術や設備によって支えることによって、現在の生産を継続している。 主食であるコメの自給率が中国や韓国よりも低いことから、自給率を高める方策を取るか、緊急な場合等を考えて確実な輸入先を確保するかなどの検討が必要であると思われる。そのために考えなければならないことが日本人の嗜好であり、コメについてはジャポニカ米を好むことから、ジャポニカ米の生産を研究しておくことが有効であると考えている。

  ジャポニカ米を生産する地域の一つとして中国東北部が存在する。現在共同研究を進めている吉林省も中国東北部に位置しており、中国政府が穀物生産基地として計画的な開発を行なっている。良好な関係を保つことによって、ジャポニカ米の研究や生産について、安定的な状況を得ることが可能になる。

朴研究員による発表風景

  朴研究員の報告においては、WDCGG(World Data Center for Greenhouse Gases)のデータを分析することによって、気候変動に対するメタンの影響を発表している。経済・社会環境グループでは、慶北大学校の東アジア持続可能経済発展研究所(所長:金忠實教授)と共同研究を進めており、今回のシンポジウムの発表も韓国の事例を取り上げている。

発表会風景(司会の韓国 慶北大学校の教授とともに)

  慶北大学校との共同研究は継続的に行なわれており、その成果は昨年2011年12月20日に行なわれた学会においても「An Analysis of the Factors Affecting Adaptation to Climate Change of Rice Farmers」と題する報告が実施されている。韓国農業従事者に対するアンケート調査を基礎として行われているこの共同研究は、着実な研究成果を上げつつある。 戦略的研究基盤形成支援事業においては、日本のみならず東アジアにおける研究ネットワークの形成と継続的な関係の定着が重要である。韓国の主要国立大学で、日本人が中国の共同研究事例を発表する。あるいは韓国の学生が日本の研究施設で中国のデータを分析する。こうした複合的なネットワークに基づいた研究の進展が、東アジアの経済および社会の発展をもたらすと考えられる。人的交流を通じた経済・社会の成長こそがわが国に明るい未来をもたらす。未来を切り拓くことができると信じている。