経済・社会環境グループ韓国(慶北大学校)における国際シンポジウム


グループリーダー  武井 敦夫

  東京農業大学の姉妹校である韓国 慶北大学校(テグ)の金忠實教授が主催する国際シンポジウムにおいて、本学浅沼市男教授、山崎和子教授、朴鐘杰講師、朴壽永研究員とともに研究発表を行なった。

韓国 慶北大学校の金忠實教授によるオープニング・スピーチと国際シンポジウム発表者による集合写真



  国際シンポジウムは「2010 International Seminar on Database Construction for Climate Change Mitigation and Adaptation」とのテーマで実施され、経済・社会環境グループではClimate Change(環境変化)への Adaptation(適応)に関係して、「Comparative Study of Korea and Japan in Rice Production, Consumption and Trade under the Rapid Climate Change」と題して、日本と韓国のコメの生産・消費・貿易についての比較研究について発表した。

  経済・社会環境グループでは、慶北大学校の東アジア持続可能経済発展研究所(所長:金忠實教授)と共同研究を進めており、今回のシンポジウムにおいても「Analysis of Perception and Adaptation to Climate Change of Rice Farmers」と題する報告において、その調査結果が韓国の研究者から紹介された。シンポジウムでは金忠實教授の所属する農業経済分野の研究成果ばかりではなく、農業工学や地理学などの研究成果を含めた多様な研究成果の報告があり、充実した研究会となった。

  同研究所と共同して進めている研究は、「水稲生産における温室効果ガスと温暖化の影響評価 -韓国の水稲生産を対象にして-」とのテーマで進められており、共同研究の契約を締結するとともに、研究者および学生(大学院生)の交流も進めている。具体的な研究者や学生の交流を通じて、あるいは研究室の交流を通じて、韓国と日本の比較研究を進めたいと考える。また経済面を中心にした検討を行い、特にGISをツールとして資料を分析し、一定の提言へと結び付けていきたいと考えている。


経済・社会環境グループ韓国と日本のコメ生産・消費・貿易についての比較研究: Comparative Study of Korea and Japan in Rice Production, Consumption and Trade under the Rapid Climate Change



 グループリーダー  武井 敦夫

   コメはアジア、特に東アジアの主要作物であり、中国やインドを中心として栽培されている。経済的にもコメはアジアにおいて重要な作物となっている韓国と日本においても、主要作物として保護されている。

*Paddy rice production of Korea and Japan, 1961-2007. (from FAOSTAT)


  近年の地球規模の環境変化はコメの生産にとってマイナスの影響を及ぼしている。人間の感覚からすればかなり長期的な変化であっても、地球規模の環境変化としてはかなり早い変化が気温などの面で起こっている。

* data from Japan Meteorological Agency.


  韓国の人口は増加し、日本の人口は減少しているが、両国ともに先進国として人口の爆発的な増加はない。しかしながら両国ともにコメ主食とし、その重要性は変化していない。そして韓国と日本ともに、必要とするコメの国内自給の必要性を感じている。

* data from FAOSTAT


  コメの貿易は麦やトウモロコシなどの穀物に比べて多くない。コメを必要とする多くの国が国内の生産で消費を賄っている。そのため貿易、特に輸入については政策的に必要時にのみ実施されている。韓国においては1980年代初めに実施されているが、これはコメの不作を政策的に補ったものであり、日本の1990年代半ばの輸入は、政治的にミニマムアクセスを受け入れたものである。

*data from FAOSTAT data, 2009


  環境の急速な変化はコメの生産を減少させるリスクを高めている。韓国と日本ともにコメを主食としているため、コメの国内生産によってこのリスクに対応することはかなり重要である。貿易の政策的な活用を含めて、気候変動によるコメ生産のリスクに対応する戦略を立てておくことはかなり重要である。その際に韓国と日本のパートナーシップは、両国のコメ生産を守りながら、リスクに備える有効な手法であると考えられる。