東アジアの環境変動と持続的経済・社会システムの未来を目指して



研究代表・学長 新沼勝利

 文部科学省の「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」に採択されました「アジア東岸域の環境圏とそれに依存する経済・社会圏の持続的発展のための総合研究」には、中国農業大学、北京大学、ハノイ農業大学、ロシア科学アカデミー極東支部など海外から多数の研究者の方々に参加をいただき、国際的な研究体制が整いました。国内からは兄弟校であります東京農業大学をはじめ多数の大学、研究機関から参加いただき研究がスタートしました。

 この度の戦略的研究基盤形成支援事業に採択された背景には、平成8年(1998)から平成19年(2007)まで13年間継続的に採択された大型プロジェクト研究による地道で、しかし先進的な研究成果の積み重ねが新しい研究の地平を拓いたものと思います。

 このさきがけとなったプロジェクト研究は「ハイテク・リサーチ・センター整備事業」(1996~2000)でありました。イメージベースの情報処理研究や地球環境研究が行われた。引き続き文科省の学術フロンティア推進事業(1997年)が採択され、東京情報大学は「優れた研究実績を上げ、将来の研究発展が期待される卓越した研究組織」として選定され、「内外の研究機関との共同研究に必要な研究施設、研究装置・設備の整備に対し、重点的かつ総合的支援」を得ることができました。

 当時、NASAが打ち上げを予定していた地球観測衛星データを受信し、それを広範な環境問題の解決の糸口にするという方針で、第1期学術フロンティア推進事業(2000~2004)は、「アジアの環境・文化と情報に関する総合研究」という壮大なテーマを掲げてスタートした。Terra(EOS-AMI)衛星のMODISデータの受信準備が進められMODISの初画像の受信に成功し、以来、アジア初のMODISデータの恒常的受信が、現在まで継続され東アジアの貴重な環境モニタリングデータとなっている。第2期の学術フロンティア研究(2005~2007年)は「東アジアにおける陸圏・水圏を統合した環境情報システムの研究」というテーマで、三つの課題を設定した。①東アジアの環境変動長期モニタリング手法の開発、②現地検証、③モデリングを掲げ、TerraとともにAquaに搭載されているMODISデータの受信とその応用に照準を絞り、東アジアの環境を陸圏と水圏を統合して把握し、この地域の持続的発展に資する環境情報システムの在り方を研究し多くの成果をあげた。

 これまでの13年間の研究成果を基盤に申請し、採択された「アジア東岸域の環境圏とそれに依存する経済・社会圏の持続的発展のための総合研究」は、東アジアを中心に衛星データと現地データを用いて陸圏・水圏に関する環境データベースを構築して環境変動を自動的に検出する手法を開発し、さらに環境変動を伴う東アジアの経済・社会圏の情報を収集し、両者間のネットワーク解析から環境・経済・社会圏の持続的な発展のための社会システムを提言することを目的にしている。

 そして、この5年間を通じて、現在、地球温暖化をはじめとする地球環境問題や米欧発世界金融危機に遭遇しているが、人類の未来に向かって大きく貢献できることを期待している。